始まりの町
《回想》
「そうだ、ゲームをしよう」
数年ぶりに大学時代一番親しかった友人の声を聞いた。
三月末日、自分の仕事が一段落したので、大学時代の友人に合うために有給を取得して電車で都会まで行くことにした。友人と言ってもたぶん彼が自分の26年間の人生の中で一番親しかった人だ。特急を乗り継ぎ、4時間ほどかけて夕方頃、待ち合わせの駅に到着した。その日が平日の金曜日だったため、途中友人から、『仕事の都合で少し遅れる』と連絡があった。さすが都会だけあって、駅の改札内外には人があふれていた。足早に帰宅を急ぐ人、近くのモニュメントの前で待ち合わせをする人、上司と思われる人に付き添うように歩く背広の一行、どの人も都会の風景そのものだった。
30分ほど遅れて友人が到着したので、適当に空いてそうな店に入り、ひとときの語らいを楽しんだ。「最近仕事どう?」「何かいい出会いはあった?」「今期アニメ何見てる?」仲のよい友人だっただけにお互い社会人として数年たちそれぞれ価値観は学生の時のそれとは少し変わってきたのかもしれないが、話が弾むのは相変わらずであった。
パーティーとかであれば司会者が「宴もたけなわではございますが...」と言い出しそうな時間になってきた時、友人は自分にとあるゲームの挑戦状を出したのであった。
《回想おわり》
近年様々なSNSツールの発達により下火となりつつあるブログだが、この度新規に始めようと思った。きっかけは友人が提示したゲームの内容にある。ゲームの内容は非常に簡単で、『自身に彼女ができない限りこれ以降連絡を取り合うことを禁止する』というものであった。友人曰く、「そうでもしないと本気で彼女作らないでしょ」だそうだ。
それを聞いたときは酔った勢いで適当なことを言っていると思ったが、どうやら本気のようだ。そのとき自分は、友人は隠れて彼女ができたのでそんな強気な発言をしているのだろうとか、もしかするとこの友人は自分のことが嫌いだったのではないかとかいろいろ考えたが、勢いに任せゲームに参加してしまった。26年間女っ気のない人生を歩んできた自分にとって今回のゲームは事実上の絶交宣言である。
そんなゲームを始めたものの、特にこれといったあてがあるわけでものなく、ゲームのことも時間と共に自然消滅するだろうと考えているうちに5月の連休がやってきた。連休中に大学院時代の先輩が自分の実家に遊びに来てくれた。この先輩は当時自分が遊んでいたブラウザゲームを勧めたところ、とてもハマってしまった。そのせいで、よく研究活動そっちのけでゲーム談義を毎日したものだ。その先輩と楽しく飲んでいる時、先輩が急に歯切れ悪く「実は職場で彼女できた」と報告してきた。自分は楽しそうに笑って「おめでとうございます」といいながら、嫉妬と絶望ともうこちら側の人間では無くなってしまった先輩への寂しさに震えた。
何で先輩に彼女ができて自分には何の縁も無いのか、なぜ、勝算のないゲームを始めてしまったのか。自分は小学生の頃からかわいい子を彼女にして青春時代を過ごすという夢があった。しかし、就職した今、それは自分の一番できないことであった。そしてこの春多くの大切な関係を失った。そこで自分は、失われたものを取り返すため、この一年間全力で理想の彼女を作ることを決心する。
これから一年間は、どんなに小さなことでもかまわないので、一週間の間に3回は恋愛に結びつきそうなことをする。このブログを可能な限り一週間ごとに更新してどんな恋愛行事を行ったかを記録するとしよう。
一年後どんな結果になっているのか、神のみぞ知るといったところだろう。26年間lonely soldierだった男がどこまでやれるのか、
さあ、伝説の始まりだ。
《今週の成果》
5/26ブログ作成